本来の落語の噺をアレンジした作品

この絵本の『たがや』のストーリーは、本来の『たがや』の噺を、作者の川端誠さんが、アレンジして作った作品です。
絵本の「あとがき」には、こう書かれています。
赤ん坊が産まれると、アメリカでは、そこに居合わせた人たちが「WELCOME!」と声をかける習慣があるそうで、それを元にして作られた中島みゆきさんの『誕生』という曲があり、最初に聞いたときから、「ああ、こんな絵本を作ってみたい」と思ったものでした。
………。
元の噺は、川開きの花火見物で大混雑の両国橋の中程、やって来た殿様の一行に出くわした仕事帰りのたが屋さん。担いでいたたがが弾けて、殿様の笠を直撃。「無礼者!そこへなおれ」と侍たち。平謝りするたが屋さん、ここで手討ちにと抜いた侍の刀を逆に奪い取り、振り回しているうちに殿様にあたり、首がスポーンと宙に飛び、すっかりたが屋の味方になった観衆が、一斉に「たがやー」というオチ。これはそのまま絵本にできるはずはありませんが、どうにかならむものかと考えておりました。
何かのきっかけでありましょうか、ふと先の『誕生』が頭にうかび、人が命を落とす話を、命が産まれる話に作り替えてはと思い立ち、出来上がった次第です。
………。
そんな思いでアレンジして作った川端誠さんの落語絵本をご紹介します。
「たが」とは、樽や桶を作るときに、円形に組んだ木版の外側に、竹を割って編んだ固定する輪っかのこと。
たが屋さんは、古くなった「たが」を締めなおしたり、付け替えたりする職人さんのこと。
「たまや~!かぎや~!」ではなく…【あらすじ】
作・絵:川端 誠
出版社:クレヨンハウス
ページ数、サイズ:24p、30.3×21.8㎝
<五つ星評価>
ストーリー:★★★★
絵・しかけ:★★★
教育・知育:★★★
笑い・感動:★★★
◇総合評価:★★★
両国橋は、すしづめの大混雑、川面も屋形船が並び…江戸の頃から、隅田川の花火は、夏の一大風物詩。
ひと月後には赤ん坊が生まれるという、たがや夫婦も、長屋をあげて、花火見物に出かけていきました。
隅田川にかかる
両国橋には、
夕方からどんどん
花火見物の
人があつまり…
「こりゃあ
たいへんな人だねえ」
「きょねんとは
くらべものに
なりませんよ」
「屋形船もごらんよ。
屋根船に小舟…
川面が
みえないほどだ」
「両国で
川をうしなう
花火かなってか」
あまりの人出に
みうごきがとれず、
なんやかやと
いっているうちに、
人の波におされて、
長屋のみんなも
橋のまんなかまで
きてしまいました。
「まだかーっ」
なんて声が、
そこここで
あがりはじめて
おりますが、
シューッと
さいしょの
花火があがった!
………。
花火見物を楽しんでいると、たが屋のおかみさんが産気づいてしまい花火見物の中で出産!
この日の掛け声は「たまや~!かぎや~!」ではなく…。

シュ~ッ
………
ドオーン
おぎゃあ
おぎゃあ
おぎゃあ
はいッ!みなさんも掛け声どうぞ!!
「○○や~!」
「落語」に関連する絵本として、こちらも多く読まれています。
【絵本】『らくごえほん ごんべえだぬき』落語はおもしろい<5歳~7歳児おすすめ絵本>
幼児には難しいストーリーかも…【感想・まとめ】
落語は、江戸の情緒あふれる雰囲気が、話し言葉で表現されて良いですよね。
大人になるにつれ、江戸言葉も知識として入り、この落語の面白さもわかると思いますが、幼児ぐらいだと、まだ馴染みが薄いため、ストーリーの面白さを理解するには、難しいかもしれませんね。
小学高学年以上から楽しめる絵本かと思います。
絵本選びの参考にしていただければ幸いです。
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