【絵本】『羅生門』悪いことすると角が生えてくるぞ~

妖怪、おばけ

今昔物語集から題材をとった新しい創作『羅生門』

 『羅生門』といえば、大抵の人は、偉大な作家「芥川龍之介」の小説を連想されるかと思います。
その芥川龍之介の小説も、話の元は「今昔物語集」の羅城門の老婆の話に基づいた作品との事。
この絵本の文の作者「日野多香子」さんも、「今昔物語集」から題材をとった新しい『羅生門』の創作話となっております。

そんな、子供向けのお話に創作された絵本『羅生門』をご紹介いたします。

◆ 羅生門とは? ◆
古代日本の都の正門。本来は「羅城門」と呼ばれていた建造物。
「今昔物語集」では、羅城門は荒廃し、葬儀のできない人が捨てられる場所で、盗人の住処になっていたと書かれている。

「羅生門」には鬼がいる…【あらすじ】

イトル:羅生門
文:日野 多香子
絵:早川 純子

出版社:金の星社
サイズ:21×25.6㎝
絵本ナビ

<五つ星評価>
ストーリー:★★★★
絵・しかけ:★★★★
教育・知育:★★★★
笑い・感動:★★★★
◇総合評価:★★★★


羅生門には近づかぬほうがよい。
あそこには恐ろしい鬼が出るそうじゃ……。

荒れ果てた京の都で、母に捨てられた<ゆきまろ>。
盗人の親分に拾われた<ゆきまろ>は、人の衣類をはぎ取り、物を奪う盗人となる…。
「心の痛み」も失っていく…。
「心の痛み」が無くなる、これすなわち、「人」が「人」でなくなること。
それを世間は「鬼」と呼ぶ……。

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ある冬の夜のことだった。
ゆきまろは羅生門の柱のかげで、
えものを待っていた。
もう三日、何も食べていない。
はらぺこで今にもたおれそうだった。

羅生門には、こおるような月の光が
ふりそそいでいる。
ふと気がつくと、ひとりのろうばが
門を通りすぎようとしていた。
「まてっ!」
ゆきまろはさけび、
相手にとびかかった。

ろうばはひらりとよけると、
「さては、おぬし、はらぺこじゃな」
と、ゆきまろをみた。
オニのすがたをおそれるようすもない。
「いっしょに食おうぞ」
ろうばは地べたにすわると、
持っていたよれよれの
ふろしきづつみをひらいた。

にぎり飯が
たった一こあらわれた。

………。


ゆきまろ 鬼の子
人はどちらにもなる 人はどちらにもなれる
人の心はそういうもの………。

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作者の祈り、願いのこもったエンディング【感想・まとめ】

この絵本の最後のページに、文の作者である日野さんの【あとがき】が書かれています。

「鬼は最初から鬼だったわけではない。時の権力や社会にしいたげられて、追われていった気の毒な人たちの、終(つい)の姿なのだ」
この言葉を聞いた私の心には、鬼は悲しい身の上の人たちという思いが宿りました。
その思いを物語したのが、この『羅生門』です。
鬼になってしまった人たちが、元に戻れるかどうかはわかりません。
ですから、これは、そうなってほしいという、私の祈り、願いなのです。

日野 多香子

あとがきからも、この絵本への思いが感じられ、読んだあとに、ジーンと涙が出てくる作品です。
早川純子さんの絵がとても迫力のある描き方なので、ちょっと怖い感じもしますが、物語は、子供向けになっているので、小学生低学年におすすめの絵本かと思います。

絵本選びの参考にしていただければ幸いです。


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